建設業の一人親方や個人事業主で、将来、法人化を考えている方は多いでしょう。
その場合の健康保険についてどうするか。建設国保加入後、そのまま社会保険(協会けんぽ)に移らずに残るという方法もあります。
法人化する場合に適用除外を受けて、建設国保に残る場合の詳しい手続き、メリットデメリットについて解説します。
事業主の状況に応じ、選択肢があることを知ってもらい、法人化後に「しまった!早く知っていればよかった」とならないように是非知識、情報として知っておいてほしいです。
実際、法人事業主で「もう法人になったが、建設国保への加入、今からでも何とかならないか」という相談が時々あります。
法人になったあとは、どうにも
ならないので、そうなる前に
是非知っておいて欲しいです!
建設国保など国保組合に加入していることが前提
建設国保組合、ここでの、全国建設工事業国民健康保険組合(略、建設国保)の例では、新規加入は一人親方か、個人事業主、個人従業員しか加入できません。
しかし、加入後、法人なりする場合は、「適用除外」(協会けんぽに適用される対象から外れる)承認を受けて残ることができます。
(※一部建設国保組合では、適用除外手続きを行っておらず、法人化する場合は、脱退となるところもあるので確認が必要)
法人なりする事業主だけでなく、個人事業主としてずっと加入する場合も、メリットは大きいです。
従業員がいる場合、協会けんぽのような従業員の保険料を会社が半分負担する必要がないため、かなりの金銭的負担軽減になります。
その他、建設国保のメリットを別記事で詳しく紹介しています。
もちろん建設現場での社会保険義務化にも、協会けんぽの他にこの国保組合、建設国保も含まれています。
現場の元請けの上位企業の事務方でも、「建設国保はだめで協会けんぽに入りなおさないといけない」といった誤った認識が一部でありますが、建設国保組合、建設国保でも大丈夫です。
これは国土交通省が一度誤解を招くような通達を出してしまったため、後日訂正で建設国保組合でも「適法」と出しました。(平成24年7月30日付け通達)
しかし、最初の通達の誤った認識のまま、協会けんぽでないと現場に入れないと思い込んでいる人がいます。
健康保険(協会けんぽ)適用除外とは
建設国保(その他建設国保組合)に加入している個人が、法人なりまたは、常時5人以上の従業員がいる事業所になった場合、本当は、協会けんぽに強制的に移ることになります。
しかし、それを健康保険被保険者適用除外申請をし、その承認を受けることで、引き続き建設国保に残ることができる制度です。
建設国保と厚生年金をセットで持つこととなります。
また、この適用除外で建設国保へ残って、後日、「やっぱり協会けんぽの方が良さそうだ」と移ることはできます。しかし、協会けんぽに移った後、建設国保へは戻れません。
保険をどうするか迷っている場合は、とりあえず適用除外にして、会社を運営しながら考えていくというのも一つの方法かと思います。
適用除外承認の手続きの流れを分かりやすく
まずは、法人化する予定があれば早めに建設国保へ相談。
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その後、登記の手続きが終わったら、すぐに建設国保へ登記簿謄本をFAXか持参。
建設国保が適用除外承認申請書を発行準備。(本部から郵送のため3,4日かかる)
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それと同時に、事業主が年金事務所へ連絡。法人設立5日以内に厚生年金の加入の手続きが必要となるため、年金事務所担当者に、「法人設立したが、適用除外申請をする。建設国保へ申請の用紙を手配中のため、提出が遅れるが待ってほしい」と伝えておけば、5日が過ぎても待ってもらえます。
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建設国保の適用除外承認申請書ができたら、年金事務所へ急いで提出。
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1週間~数週間後、年金事務所より適用除外承認通知書と標準報酬決定通知書が郵送されてくる。それを建設国保へFAXか持参。
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建設国保が確認後、保険証を発行。
◎大事なことは、手続きが遅れそうな時は、年金事務所へ遅れることを伝えておくこと。年金事務所も待ってくれますので、早め早めに年金事務所や建設国保へ相談することが大事です。
法人化して何日も過ぎた後の報告になると、選択の余地はなく、建設国保を脱退し、協会けんぽへ強制加入ということになります。
建設国保に残るメリット
事業主、会社にメリットが大きいです。建設国保であれば、協会けんぽのような従業員分の保険料の折半がありません。保険料を半分会社が負担する必要がありません。
建設国保に残るデメリット
人手不足、特に建設業界は働き手が不足しているといわれます。その中で、保険が「国保」というと、それだけで、敬遠されてしまう可能性は高いです。
従業員で国保というのは、
段々時代おくれに
なりつつあるようです💦
会社によっては、従業員の保険料を自主的に3割や一部負担するというところもあります。事業主がそれは自由に決めることができます。
個人事業所でも適用除外を受けるケース
前述のように、個人事業所であっても、従業員が常時5名以上になると強制的に協会けんぽに移るか、適用除外を受けて建設国保に残るかです。
また、5名にならなくても、自主的に従業員に厚生年金をかけるために適用除外を受ける場合も。常勤従業員の半数以上の同意を得れば「厚生年金の任意加入」が認められます。その場合、従業員は全員加入となります。事業主は対象外です。
まとめ
個人事業主が法人化した場合の社会保険=協会けんぽへの強制加入や、その適用除外のことはあまり知られておらず、法人化した後に協会けんぽに強制加入になり、しまった!という声も聞きます。
適用除外の手続きも難しいように見えますが、各建設国保組合で担当者が、詳しく手続き方法を説明しますし、実際やってみるとそう難しいものでもありません。
大事なことは、建設国保や年金事務所へ早めの相談です。
少しでもこの記事で、事業主に、「協会けんぽか、建設国保に残るか」、自分の会社の従業員への健康保険料をどうしていくか、会社の運営方針の一つとして、より良い選択ができる情報になれば嬉しいです。
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